■ なぜ傷跡が残るのか — 傷の治癒過程と「瘢痕化」のメカニズム
粉瘤摘出手術後にできる傷跡は、単に皮膚が切れたから残るわけではなく、皮膚が「治ろうとする過程」でつくられる“瘢痕(はんこん/傷あと)”の産物です。手術当日は傷ができても、その後
- 止血・炎症 →
- 真皮でのコラーゲン産生 →
- 表皮の再生(上皮化)
という流れで「傷がふさがる」正常な修復が進みます。
ただし、この間に以下のような要因があると傷跡が目立ちやすくなります:
- 傷口が乾燥したり、刺激を受けたりする
- 傷が引き伸ばされたり、摩擦・圧迫されたりする
- 紫外線にさらされる
- 古くからの慢性的な炎症や過剰なコラーゲン生成(肥厚性瘢痕、ケロイド)
こうした状態では、赤み・盛り上がり・色素沈着などが残りやすくなります。
つまり、「傷をつくらない」のは不可能としても、「傷をきれいに治す」ためには、「治癒過程を適切にコントロールする」ことが大切なのです。
■ 傷跡を残しにくい術式の選択 — “くりぬき法”と“切開法”の違い
粉瘤の摘出法は複数あり、術式の選び方が傷跡の仕上がりに大きく影響します。私たちが重視しているのは、可能な限り“傷を小さく・目立たなく”することです。
- くりぬき法(パンチ法・へそ抜き法)
直径4 mm前後の小さな穴から粉瘤を摘出する方法で、傷が非常に小さくて済みます。そのため「術後の瘢痕が目立ちにくい」のが最大のメリットです。
ただし、粉瘤の袋(被膜)が癒着していたり、炎症が強く構造が複雑な場合は、この方法では不十分なことがあり、その場合は切開法が選ばれることがあります。 - 標準切除法(切開法)
皮膚を切開して粉瘤を袋ごと切除する、昔ながらの方法。被膜を確実に取り除けるため、再発リスクは低めですが、傷は“切開線”として残るため、部位やサイズに応じて瘢痕が目立ちやすくなる可能性があります。
ただし当院の場合、皮膚科学に基づいた切開線のつけ方、美容外科学に基づいた縫合を行うので
最大限目立たなくすることが可能です。
それぞれのメリットデメリットを加味して、ご自身にあった方法を選択しましょう。
また、当院では術前にエコー検査をすることで、病変の範囲や深さを確認してから施術を行うため
不必要なダメージを残すことがありません。
■ 術後ケアが重要 — 「湿潤療法」「シリコン療法」「保湿・保護」など
手術後のケアは、傷跡の仕上がりを左右する最も重要なポイントです。特に次のようなケアを丁寧に行うことで、瘢痕を最小限にできます。
・清潔に保つこと
手術直後は、傷口を清潔に保ち、細菌感染のリスクを下げることが第一。術後処置は医師の指示通りに行いましょう。
感染を防ぎ、傷が治りやすい環境を整えることが、きれいな傷あとにつながります。
・湿潤環境を保つ(=“乾かさない”)
昔は「傷は乾かすべき」とされていましたが、現在では「ある程度湿潤な状態を保つ」ことで、皮膚の再生がスムーズに進み、色素沈着や盛り上がりが起こりにくいとされています。
当院をはじめ、多くの施設ではこの「湿潤療法」を採用しています。ガーゼ・ドレッシングまたは医療用テープなどで傷を覆い、乾燥を防ぎます
・保護テープの活用
傷がきちんと閉じた段階(上皮化後)で、医療用テープを用いることで、瘢痕の厚み・盛り上がり・赤み・色素沈着を軽減できます。
・紫外線対策・刺激を避ける
術後の皮膚はとてもデリケートで、紫外線による色素沈着が起きやすいため、外出時は紫外線対策(帽子、日傘、SPF入りのクリームなど)が重要です。
また、マスクの縁や衣類の摩擦、枕やベルトの圧迫など、頻繁な刺激がある部位は、できれば避けるか、保護を工夫してください。
・瘢痕が成熟するまで時間をかける&適切なケアを継続
傷は表面がふさがっても、真皮の“再構築フェーズ”(コラーゲンの整理・新生など)は数カ月〜最大で1年近く続きます。
そのため、少なくとも術後数か月は、保湿・保護・紫外線対策などを根気よく続けることが、きれいな仕上がりの鍵です。
■ 当院で私たちが心がけている“きれいな治療”の工夫
私たちあいちビューティークリニックでも、粉瘤手術において以下のような配慮を重視しています:
- 状態を詳しく診察したうえで、治療法を検討
- 可能な限り小さな切開で袋(被膜)を丁寧に取り除き、再発リスクと傷跡のバランスを両立
- 術後のケア指導を丁寧に行い、湿潤治療、保護テープ、紫外線対策などを患者さまに説明
特に顔・首など「目立つ部分」に粉瘤がある場合には、「治すこと」だけでなく「きれいに治すこと」を最優先に考えています。
■ まとめ — 手術後こそ「丁寧さ」と「継続」が大事
粉瘤摘出後の傷跡は、術式だけでなく、術後のケアや生活環境、時間という“条件”によって大きく変わります。
「適切な除去術+湿潤療法+保湿・保護+紫外線対策+適切な生活」を組み合わせれば、目立つ傷跡を最小限に抑え、美しい仕上がりを目指すことが可能です。





